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書籍レビュー

【自粛警察のメカニズムとは?】ヒトは「いじめ」をやめられない:いじめは悪ではなく、本能なんです【要約・解説】

この記事は、下記の動画を文字起こしした内容となっております。

こんにちは、こんばんは、TKです。

 

今回ご紹介するのは、中野信子さんの著書「ヒトは「いじめ」をやめられない」という本です。

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本書は、「いじめ」が起きてしまうメカニズムを脳科学の視点から解き明かしつつ、いじめを減らしたり回避したりする方法を提案する内容となっております。

なぜ「いじめ」について語っている本を取り上げたかというと、今問題となっている「自粛警察」の存在について解説したいと思ったからです。

「いじめ」と「自粛警察」は違う問題に感じるかもしれませんが、実は共通している原因があるので、今回はその原因を解き明かしていきます。

今、ニュースを見ると、自粛警察による過激な行動がよく報道されていますよね。

県外ナンバーの車を傷つけたり、パチンコ店のガラスを割ったり、ひどい場合は医療従事者を誹謗中傷するような人もいます。

コロナ渦中という不安な時代を生きているとは言え、なぜここまで過激な行動に走る人が続出してしまうのでしょうか?

それは、脳の仕組みに原因があるんですよ。

いくら自粛警察の問題について議論しても、問題を引き起こしている根本である「脳の仕組み」を理解しないことには、この問題は解決できないと僕は思います。

この動画を最後まで見ていただければ、自粛警察が過激な行動に走る原因、そして自粛警察から逃れる方法について知ることができます。

ぜひ今回の動画を参考にしていただいて、自粛警察の被害者にも加害者にもならない生活を獲得してもらえたら嬉しいです。

今回は、以下3つのテーマで解説を進めていきます。

  • ① 自粛警察は生存本能による行動
  • ② ドーパミンが行動を過激化させる
  • ③ 自粛警察への対処方法とは?

ではさっそく、1つ目のテーマから見ていきましょう!

① 自粛警察は生存本能による行動

なぜ人は自粛警察となって、過激な行動に走ってしまうのでしょうか?

理由として考えられるのは、「コロナウィルス感染症の拡大を防ぎたいから」というものだと思います。

もちろん、この理由も自粛警察として行動する根拠として納得はできます。

しかしこれだけでは、表面的な理由を理解したにすぎません。

もっと理由を深堀りしていくと、自粛警察が発生する理由は、人の生存本能にあることがわかります。

人は他の動物に比べて、より社会的な行動を取ることができますよね。

なぜ人が社会的な行動を取れるかというと、脳の前頭葉という部分が発達しているからなんですよ。

目的に向かって行動したり、他人に共感したり、危険を察知して行動を自制できたりするのも、前頭葉が他の動物に比べて発達しているからと言われています。

そして社会的な行動が取れる人間は、種として生き残るために、集団行動を大事にしてきた動物と考えられます。

人類がここまで発展できたのも、集団行動を取れたからなのは、間違いないですよね。

では、そんな集団行動を取る上で最も脅威になるものは何でしょうか?

この質問に対して、「敵と見なせる他の集団」と思った方もいると思います。

もちろんそれも間違いじゃありませんが、実は敵という存在は「集団の結束力を高める効果」もありますので、1番の脅威とは言えません。

結論を言うと、社会的集団にとって最も脅威なのは「フリーライダー」です。

フリーライダーとは「タダ乗りする人」という意味ですね。

集団を維持するためには、皆が協力し合っていく必要があります。

しかし中には、働きもせず、皆が稼ぎ出した資産を使うだけの存在もいますよね。

そんな人が集団にいたら、どうなるでしょうか?

働くのがバカバカしくなり、皆働かなくなります。

結果として、集団は崩壊してしまうのです。

だから集団が崩壊してしまう前に、フリーライダーになりそうな人を排除するモチベーションが高まるということですね。

このフリーライダーになりそうな人を見抜く機能を「裏切り者検出モジュール」、そして他人に制裁を加える行動を「サンクション」と言います。

はい、ここまでのお話を聞いてどう思ったでしょうか?

鋭い方は、「フリーライダーと自粛警察って何の関係があるの?」と疑問に感じていると思います。

自粛警察の標的はあくまでも、「コロナウィルス感染症を拡大させそうな人」ですから、フリーライダーではありません。

なので、フリーライダーのお話では、自粛警察が発生する理由を説明できていないように思えますよね。

しかしですね、このフリーライダーのお話と自粛警察はちゃんと関連性があります。

ここで、先ほど説明した「裏切り者検出モジュール」を思い出してください。

実はこの機能、フリーライダーにだけはたらくものではありません。

「裏切り者検出モジュール」が検知するのは、フリーライダーに「なりそうな人」なんですよ。

もっと具体的に説明すると、「たまたまルールを知らなかった人」や「周りと違う意見を持っている人」、つまりは普通じゃない人に対しても「裏切り者検出モジュール」ははたらいいてしまいます。

このように、フリーライダーでもない人に「裏切り者検出モジュール」がはたらき、制裁を加えることを「オーバーサンクション(過剰な制裁)」と言います。

だから県外ナンバーの人を見かけただけで「こいつはヤバいやつだ!」と脳が過剰に反応してしまい、合理的な意味はないのに車を傷つけてしまうわけですね。

はい、長くなってきましたので、ここまでのお話を簡単に振り返ります。

  • 人は社会的集団を維持するために、フリーライダーを検知する「裏切り者検出モジュール」機能がある
  • 「裏切り者検出モジュール」はフリーライダーになりそうな人、つまりは普通じゃない人にもはたらく

まずはこの2点を押さえてもらえればOKです。

ここまでのお話を理解するだけでも、「自粛警察は脳の仕組み上、発生するのは必然なんだ」と考えられますよね。

そう考えることができれば、「自粛警察になる人は悪だ」と決めつけることもなくなり、自粛警察に対するイメージも変わってくるはずです。

このように知識を身につけていけば、冷静に物事を判断することができますので、ぜひ続きを聞いていってほしいと思います。

② ドーパミンが行動を過激化させる

先程は、「生存本能によって自粛警察が生まれてしまう」というお話をしました。

ただ、このお話には続きがあります。

生存本能が原因とは言え、自粛警察の行動は過激なものが目立ちますよね。

いくら県外ナンバーの車を見つけたからって、傷つけるようなことは普通しませんよね。

そもそも合理的に考えれば、車を傷つけるのはかなり非合理的な行動です。

車を傷つけたからといって、その人が二度とその県にこないとは言えませんよね。

また、傷つける場面を見られたら仕返しされるリスクもありますし、傷つけている時間は遊んだり仕事をしたりすることもできません。

つまり制裁行動は、かなり損な行動なんですよ。

じゃあなぜ、こんな損な行動を人間は取り続けてしまうのか?

理由は、制裁行動を取ると、快楽物質と呼ばれるドーパミンがドバドバ放出されるからです。

このドーパミンは食事や性行為によっても放出されるのですが、なんとそれよりも、正義を軸とした制裁行動のほうが、ドーパミンによる快感を感じやすくなるそうです。

実際に本書には、以下のような記述があります。

所属集団=種を守るために、ルールに従わないものに罰を与えるという「正義」をもって制裁を加えるため、そこでは正義達成欲求や、それによる所属集団からの承認欲求が満たされます。

言ってみれば、個人的欲求である食欲や性欲から、さらに次元の上がった「快楽」を感じるのです。

出典:ヒトは「いじめ」をやめられない

はい、いかがでしょうか?

食欲や性欲より高い次元の快楽っていう表現が、なかなか怖いですよね…。

つまり1度ドーパミンが放出されてしまうと、「理性を軸に行動できない人間になってしまう」ということです。

ここで、ドーパミンの放出によって学生たちが過激な行動をとってしまった有名な実験、スタンフォード大学監獄実験をご紹介します。

スタンフォード大学の教授:フィリップ・ジンバルドーは、1971年にこんな実験を行いました。

面識のない学生たちを21人集め、その学生たちを「看守役」と「受刑者役」の2グループに分け、それぞれ役割を演じてもらいました。

一見するとただのお遊びのように感じますが、そこには悲惨な結果が待っていたんですよ。

看守役の学生は受刑者役に対して、右足に重い鎖をつけたり、腕立て伏せを強要したり、食事を与えなかったり、素手で靴やトイレを磨かせたりしました。

恐ろしいのが、この行動はジンバルドーが命じたものではなく、看守役の学生が勝手にやったことです。

このように、「正義を守る者」という役割を与えられただけでも、人は過激な行動に走ってしまうことが明らかとなりました。

そしてこの実験は、6日目に終了することになったそうです。

理由は、たまたま実験の見学に来たジンバルドーの彼女が、あまりにひどい状況にショックを受けて、今すぐ実験を中止するように言ったからです。

いやー、彼女が実験を見に来てくれて、ホントに良かったと思いましたね。

この実験結果から、人は正義を振りかざすことでドーパミンが放出され、ますます行動が過激になってしまうことがわかります。

はい、ここまでのお話をまとめると、

  • 社会的集団を守るという生存本能がある
  • 正義を軸とした制裁はドーパミンを放出する

以上2点の要因が自粛警察を生み、行動を過激化させることにつながっていると考えられます。

では最後に、以上の要因を踏まえた上で、自粛警察への対処方法を考えていきましょう。

③ 自粛警察への対処方法とは?

僕たちは自粛警察から身を守ることはもちろん、自粛警察側にならないように気をつけることも必要です。

では最初に、加害者にならない方法から考えていきましょう。

結論から言うと、加害者にならないためには、「制裁を加えたくなるのは本能やドーパミンのせいだと理解すること」が有効です。

人は理性的な生き物ですから、知識によって理性を保ち、行動をコントロールすることができますよね。

なので今後、あいつを懲らしめてやりたいと思ったら、「ああ、この感情がオーバーサンクションかもしれないな。この感情に従って行動すると非合理的な結果を招くから気をつけよう」と考えてみてください。

この思考によって「制裁を加えたい!」という感情がゼロになることはありませんが、感情を抑えることはできます。

ここで補足しておきますが、僕はコロナウィルス感染症を気にせず遊び回る人を、正当化しているわけではありません。

ただ、本能に従って制裁を加えても良い結果を招かないから、「制裁を加えたい!」という感情を抑えることを主張しています。

今回のテーマとズレるので深堀りはしませんが、コロナウィルス感染症を拡大させそうな人を抑える仕組みはもちろん大事ですし、国を上げて考えていくテーマだと思います。

はい、話を戻します。

では次に、被害者にならない方法を考えていきましょう。

結論から言うと、「目立つ行動を取らない」ことが最も有効だと考えます。

「えー、それじゃ私達が我慢するしかないってこと?」と思われたかもしれません。

はい、そのとおりでございます。

結局のところ、自粛警察が発生する原因は本能や快楽物質にありますから、完全にゼロにすることはできません。

しかも自粛警察として活動している人は「自分は正しい」と思って行動しているので、今回のようなお話をしても聞き入れてもらうのは難しいです。

なので、消極的な対応に感じるかもしれませんが、「目立つ行動を控えてコロナが収束するのを待つ」これが無難な対処法だと思います。

ただ今は幸いなことに、家にいても楽しむことができる時代です。

「映画・読書・筋トレ・料理・ゲーム」こんな感じで、家でも楽しむことは十分にできますよね。

むしろ「ステイホームでじっくり楽しめるのは今だけだ!」と現状をポジティブにとらえて行動できると、ステイホームでも楽しく過ごせます。

僕もホントは競馬を見に行きたいのですが、ネット配信でなんとか我慢しております…。

ぜひ今回の教えを胸に刻んでいただいて、加害者にも被害者にもならない生活を送ってもらえたら嬉しいです。

まとめ

はい、これで「ヒトは「いじめ」をやめられない」の解説は以上になります。

ではまとめとして、今回ご紹介した内容をサクッと振り返りましょう。

  • ① 自粛警察は生存本能による行動→裏切り者検出モジュールが過剰に反応してしまうことがポイント
  • ② ドーパミンが行動を過激化させる→制裁行動は、食欲や性欲を超える次元の快楽をもたらす
  • ③ 自粛警察への対処方法とは?→今回の教えを胸に刻み、目立たない行動を取ること

ただ、今回お話した内容は本書の1部分であり、まだまだ紹介できていないことがたくさんあります。

今回はドーパミンに焦点を当てたお話をしましたが、他にも「オキシトシン」や「セロトニン」といった脳内物質も、過激な行動につながることが書かれていました。

特にセロトニンに関するお話は、日本人の国民性にまで踏み込んだ深いお話となっていまして、とても興味深い内容となっております。

より深い学びを得たい方は、ぜひ本書を手にとって読んでみてください。

では、本書を読んで最も心に残った「神の一文」をご紹介して終わりにします。

脳の機能は、それを完全に止めることはできませんし、倫理的に許されません。

しかし、脳をだますことや、その機能をコントロールすることは可能です。

出典:ヒトは「いじめ」をやめられない

はい、以上になります。

ご清聴、ありがとうございました!

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