こんにちは、TKです。
今回ご紹介する本は、「妄想する頭 思考する手」という本です。
タイトルにある「妄想する頭」とは、1発では他人に理解されない発想のことで、「思考する手」とは、その妄想を形にして発信するまでのプロセスのことを意味しています。
要するに本書は、「突拍子もない妄想がイノベーションのカギになること、そしてその妄想を発信したり形にしたりする方法を、実例を交えながら教えてくれる」という内容になっております。
もしかしたら今の説明を聞いて、「自分はイノベーションを生み出す仕事なんてしてないから、自分には関係ない話だな」と思われたかもしれません。
たしかに、本書で解説されている実例はレベルの高いものが多く、自分とは関係のない世界の話と思ってしまうのも事実です。
しかし、誰だって多かれ少なかれ、自分のアイディアを発信する機会はありますよね?
例えばサラリーマンとして働いていれば、自分の考えをプレゼンする機会がありますし、プライベートでも、SNSで思ったことや感じたことを発信することがあると思います。
仮に今、自分の考えを発信する機会に恵まれていなかったとしても、いつか自分の考えを求められる立場になるかもしれません。
また知識として、世の中のイノベーションの多くは「妄想が根底にあった」ということを知っておいて損はないはずです。
今回のお話は、すぐに役に立つ内容ばかりではありませんが、長い人生を生き抜くための「教養」としての価値があります。
今回のお話が、あなたの血肉として活きることになれば幸いです。
はい、今回は、「妄想する頭 思考する手」の内容を以下3つのポイントで解説します。
- なぜ妄想が必要か?
- 妄想を形にするノウハウ5選
- 妄想から生まれたトンデモ発明
では、解説に移る前に、著者の暦本純一さんの人物像を、簡単にご紹介します。
著者:暦本純一さんのご紹介
暦本純一さんは、1961年2月4日、東京都で生まれました。
1984年に東京工業大学を卒業した後に、NECに入社。
その後、方向性の違いからソニーへと転職しました。
そして現在は、東京大学大学院情報学環教授として勤務されております。
暦本さんは妄想とも言える自由奔放な発想から、様々なアイディアを形にしてきました。
そんな暦本純一さんの代表作は、「スマートスキン」です。
おそらく、
スマートスキン?
と思いましたよね。
名前は聞いたことないと思いますが、実は僕たちは、この「スマートスキン」の技術を毎日のように使っています。
スマホ上に表示された画面を、2本の指で大きくしたり小さくしたりできますよね?
あの動作をピンチングと言うのですが、その動きを可能にしているのが、暦本さんの開発した「スマートスキン」というわけです。
あの技術を開発した人とわかれば、暦本さんがどんなに凄い人か、1発で理解してもらえたと思います。
しかしこの「スマートスキン」は、スマホが作られる前に開発された技術なんですよ。
そうです、暦本さんは、なんの役に立つのかよくわからないまま、「スマートスキン」を開発したということです。
「現実世界ではモノを1本指で操作することのほうが珍しいのに、なぜマウスでは常に1本指で操作しているのか?」
そんな疑問から、2本指で操作できる「スマートスキン」を思いついたそうです。
そんな発想ができるのも凄いですが、その技術をなんの役に立つのかわからないまま、作り上げてしまう情熱が、ホントに凄いと思いました。
しかし、具体的な目的がないままに技術を開発することが、イノベーションの根源であると暦本さんは主張します。
では、なぜ具体的な目的もなく技術を開発することが、イノベーションにつながるのか?
そんな疑問に、まずは答えていきます。
なぜ妄想が必要か?
ではさっそく、なぜ妄想が必要なのか?
その結論から申し上げます。
妄想が必要な理由は、未来は予測できないからです。
未来は予測できないから
基本的に技術開発って、何か課題があって、それを解決するために生み出されるイメージですよね?
例えば、「もっと楽に効率よく農作業を行なう」という課題に対して、自動の田植機や稲刈り機が開発されるのは、自然な流れだと思います。
最近流行りのSDGsも、「世界の貧困をなくす」「地球環境を改善する」という明確な課題がありますよね。
ただ、未来に何が起こるかは予測ができないので、現時点ではなんの役に立つのかはわからない開発も必要だと、暦本さんは主張します。
例えば、今世界中で大流行しているコロナウィルスの登場など、だれが予想できたでしょうか?
もちろん、誰も予想できませんでしたよね。
このコロナウィルスの流行によって、テレワークの需要が一気に高まったわけですが、意外とすんなり、テレワークに移行できた人は多いと思います。
なぜこんなにもすぐに、テレワークに移行できたか?
それは、コロナウィルスが流行る前から、テレワークの技術開発に没頭していた人たちがいるからです。
もちろん、テレワークの技術開発はコロナウィルスの流行が無くても、ある程度の需要は獲得できたと思います。
ただコロナウィルスの流行がなければ、現状ほど需要が高まることはなかったでしょう。
人は未来を完璧に予測することはできません。
だから暦本さんは、課題を設定した上で技術開発を進めることを認めつつも、課題がない技術開発も必要だと訴えているのです。
妄想は不真面目ではない
ここで言う「課題がない技術開発」は、妄想から生み出されます。
ただし「妄想」と聞くと、「頭がおかしい人の考え」というイメージを抱く人もいると思いますので、ここで定義をハッキリさせておきます。
妄想は「非真面目」のことであり、「不真面目」のことではありません。
はい、余計に意味がわからなくなったかもしれません、すいません。
この「非真面目」と「不真面目」の定義は、暦本さんの解説がとてもわかりやすいので、本書から引用させていただきます。
不真面目は、いわば「真面目度」を図る価値軸の上に乗っている。そこでプラス点が多ければ真面目度が高く、マイナス点が多ければ不真面目度が高い。(中略)
しかし「非真面目」は、その「真面目度」を図る価値観の上に乗っていない。非真面目な人は、そもそも真面目路線が眼中にない点で、不真面目な人とは違う。学校の授業や先生の命令があろうがなかろうが関係なく、自分がやりたいことに集中しているのが非真面目な態度だ。
引用:妄想する頭 思考する手
はい、いかがでしょうか?
要するに、「妄想すること=非真面目」とは、ただ単に価値観のレールが外れているだけで、決してネガティブな意味じゃないということです。
妄想の源泉は「違和感」
ただ、妄想しろって言われても、なかなか難しく感じたと思います。
しかし、ご安心下さい。
暦本さんは妄想の源泉を、わかりやすい言葉で指し示しています。
妄想は、現時点での最先端から始まるわけではない。むしろ、現実の世界に対して違和感を抱くところから始まる。
引用:妄想する頭 思考する手
はい、妄想の源泉は、違和感だったんですね。
例えば暦本さんが開発したスマートスキンも、「なぜマウスは1本指だけで操作しているのか?」という違和感からスタートしています。
おそらくあなたの中にも、「世間には浸透しちゃっているけど、これはおかしいよなぁ」と思うことが、1つや2つありますよね。
もしかしたらその違和感が、イノベーションを起こすキッカケになるかもしれません。
ぜひその違和感を大事に温めて、いつの日か世に解き放ってほしいと思います。
「何言ってんの?」と思われてからがスタート
はい、しかし違和感というのは万人に理解されないことが多いので、発信するのに抵抗を感じる人も多いと思います。
しかし、理解されないくらいで、ちょうど良いんですよ。
暦本さんが考えた「スマートスキン」も、当時はなんの役に立つのかわからない「妄想」から始まりました。
まだスマホがない時代でスマートスキンの話をすれば、「指で画像を拡大する?何言ってんの?」と思われるかもしれません。
しかし逆に、「何言ってんの?」と思われるくらいでちょうど良いと、暦本さんは言います。
なぜなら、話を理解されたということは、同時にアイディアのスケールが小さいことを意味しているからです。
なので暦本さんは自分のアイディアを話したときに、「キョトン」とされると、嬉しくなるそうです。
もしあなたが「素晴らしいアイディアを思いついた!」とひらめいたら、ぜひそれを誰かに話してみて下さい。
「何をわけからないこと言ってるの?」という反応をされたら、そのアイディアは、イノベーションを起こす火種になるかもしれません。
妄想を形にするノウハウ5選
はい、ここまでのお話で、「課題を設定することも大事だけど、課題を設定しない妄想を起点とした取り組みも重要」ということが、ザックリと伝わったかと思います。
では次に、妄想を形にして世に発信するノウハウを、大きく分けて5つご紹介します。
そのノウハウとは、以下のとおりです。
- 具体的に表現する
- 孤独な時間大事にする
- すぐに行動する
- 失敗を歓迎する
- 方向転換も視野に入れる
では、それぞれ説明していきます。
具体的に表現する
妄想というのは、どこかフワフワしており、自分でも明確に理解できていないことすらあります。
そのような場合まずは、自分の思考を整理することが必要になります。
そして思考を整理する上で役に立つのが、「具体的に表現する」というノウハウになります。
なぜ「具体的に表現する」ことが良いかと言うと、妄想を行動に移すことができるからです。
どういうことか?
これは、逆に「抽象的な主張」を見てみると、言っている意味がわかると思います。
例えばあなたが友達に、「"効率的で人にやさしい次世代型の情報検索技術"を開発したいんだよね!」と言われたら、どう思いますか?
抽象的すぎて、結局何をしたいのかが、全く伝わりませんよね。
しかし、「"2本指で画像のサイズを変更できる技術"を開発したい!」と言われたら、そのアイディアを受け入れられるかどうかは別として、何をしたいのかは理解できます。
このように、何をしたいのかが明確になって初めて、人は行動に移すことができます。
なのでまずは、頭の中の妄想を具体的な言葉で表現してみてください。
孤独な時間大事にする
ただ、妄想を具体的な言葉で表現する際に、注意すべきことがあります。
それは、「必ず孤独な時間を設けなければならない」ということです。
なぜなら、多数の人間で議論し合うと、悪い意味でお利口なアイディアが生まれてしまうからです。
やはり多数の人間が集まると、どうしても人はバランスを取ろうとしてしまい、妄想と呼べるアイディアはなかなか生まれません。
あの伝説の漫画家「手塚治虫」先生も、漫画制作の最初の段階である絵コンテ作りは、部屋に籠って1人で描いていたそうです。
独創的で面白い、妄想とも呼べるアイディアは、1人の人間の頭から生まれるものです。
なので、妄想を言語化するまでの過程では、なるべく1人で行うことをおすすめします。
すぐに行動する
はい、妄想が具体的な言葉で言語化できたら、すぐにでもやれることをやってください。
しかし「すぐにでも行動しろ!」という言葉は、あらゆる自己啓発本で主張されていますので、耳にたこができていると思います。
しかし、結局は「すぐやる人」が結果を出すのが、この世の原理原則なんですよ。
ここで、本書の中から、大いに共感できた文章を抜粋してご紹介します。
たとえば、「政治家になるにな何をすればいいですか?」とアドバイスを求める若者にどう答えるか。たぶん政治家になるルートはたくさんあるだろう。そこから逆算すれば、なにか政治家塾みたいなものに入るとか、地方議員の手伝いをするとか、政党の支部に入るとか、今できる準備はいろいろあると思う。でも私がいちばん好きなのはこのアドバイスだ。
「政治家になりたいなら、選挙に出なさい」
引用:妄想する頭 思考する手
はい、いかがでしょうか?
僕はこの考え、すごく好きなんですよね。
少し説教臭い話をしますが、人生は有限ですから、やれることはすぐにでもやったほうがいいです。
今のお話、当たり前過ぎて心に響かなかったかもしれませんが、とても重要なことなので、ぜひ胸に刻んでおいてください。
失敗を歓迎する
はい、やれることをすぐにでもやるのは素晴らしいのですが、必ずと言っていいほど、何かしらの失敗をします。
そこで多くの人は、「失敗した…」と落ち込むのですが、落ち込む必要など全くありません。
むしろ、失敗して良かったと思うべきだと、暦本さんは言います。
なぜ失敗を喜ぶべきか?それは、「失敗しないようなアイディアは、誰でも簡単に再現できる可能性が高いから」です。
ここで、暦本さんのお言葉を拝借させていただきます。
技術開発なら、アイデアが固まったところで実験や試作が始まるが、どんなに良いアイデアでも、一発で成功するのは稀だ。ほとんどは途中で思いがけない問題が生じる。
それを解決して先に進むには、さらなる「アイデア」が必要になることもある。その壁を突破するひらめきを得るまでに、最初のアイデアを考えるとき以上の「生の苦しみ」を味わうかもしれない。しかし、これは少しも悪いことではない。
私の場合、途中で何も苦労することなくうまくいったときの方が不安になるぐらいだ。
引用:妄想する頭 思考する手
はい、いかがでしょうか?
「失敗しない方が不安になる」、なかなか面白い発想ですよね。
しかし、暦本さんがおっしゃることに、僕は大いに共感できます。
簡単に実現できることなんて、結局は誰でもできちゃいますよね。
要するに、簡単にできることに、大した価値はないということです。
だから巷でよく売られている、「誰でも簡単に稼げるハイパーメソッド!」みたいな商品には全く価値がないと言えます。
エジソンはあらゆる製品を世に生み出しましたが、その裏では、1万回の失敗を重ねています。
ただ当の本人は、「1万通りのうまくいかない方法を発見した」と捉えているそうです。
このメンタルの強さはなかなかマネできませんが、大きな成功の裏には必ず失敗があることだけでも、胸に刻んでおいてください。
方向転換も視野に入れる
はい、最後にお伝えするノウハウは、「方向転換も視野に入れる」です。
先ほど、アイデアを形にするには、失敗を重ねるプロセスも必要だと説明しました。
ただ、失敗を重ねていくうちに「このアイデアは実現が無理そうだ」とか「思っていたより面白くないな」と思うこともあります。
もちろん、1回の失敗で諦めるのは論外ですが、いつまでも失敗を重ね続けるもの正しいやり方とは言えません。
したがって、場合によっては当初のアイデアに見切りをつけて、方向転換をする必要もあります。
当初のアイデアは、とても可愛く見えてしまうもので、見切りをつけるのは心理的な辛さもあるかもしれません。
ただ、見切りをつけて方向展開したことにより、思わぬゴールに辿り着く面白さもあります。
例えば暦本さんは、以前に「振動によって人を誘導する」というアイデアを元に、技術開発を進めていたことがありました。
もしその技術が実現すれば、視覚障害者の白杖を進むべき方向に向けたときに「ブルッ」と振動させることで、目的地まで誘導させることもできそうですよね。
しかし技術開発中に、ある妙な現象が起こったそうです。
デバイスがブルッと震えた瞬間に、手がある方向に引っ張られる感覚になったそうです。
この感覚をキッカケに、「振動によって人を誘導する」というアイデアから、「振動によって人を物理的に引っ張る」というアイデアに方向転換をした暦本さん。
のちに、スタンフォード大学でこのアイデアを披露し、「あとで実物に触らせてあげます」と言ったら、講義終わりに学生たちに取り囲まれたそうです。
このように、柔軟に方向転換したことによって生み出されたアイデアや商品が、この世の中にはたくさんあります。
試行錯誤が行き詰まってしまった場合は、ぜひ方向転換も視野に入れてみてください。
はい、以上が妄想を形にするノウハウ5選でした。
改めてノウハウのタイトルだけお伝えすると、
- 具体的に表現する
- 孤独な時間大事にする
- すぐに行動する
- 失敗を歓迎する
- 方向転換も視野に入れる
となります。
特に①の具体的に表現するというノウハウは、行動を起こすための必須アクションなので、ぜひ活用して欲しいです。
妄想から生まれたトンデモ発明
はい、では最後に、妄想から生まれたトンデモ発明について解説しようと思います。
冒頭では「スマートスキン」などの発明に触れましたが、ここからお話しする発明は、なかなか理解に苦しむ発明です。
しかし、その発明には確かな愛情もあって、聞いてて心がほっこりすること間違いなしです。
では、妄想から生まれたトンデモ発明、「ハピネスカウンター」について解説します。
笑わないと開かない冷蔵庫
ハピネスカウンターといのは、暦本さんが学生と一緒になって開発した「笑わないと開かない冷蔵庫」のことです。
正直、なんじゃそりゃ?って思いましたよね。
笑わないと開かないなんて、ただただ不便なだけに感じます。
しかしこの発明には、暦本さんのある想いが込められています。
人は笑うから、幸福になる
ここでいきなり質問なのですが、「人は幸福だから笑うのではない、笑うから幸福なのだ」という話を聞いたことあるでしょうか?
もちろん、面白いことが起きて笑うのが自然な流れなのですが、実は心理学の世界では、笑うことで幸せになるという説が唱えられています。
その説を直感的に理解していた暦本さんは、笑顔で開ける製品を思いついたわけです。
純粋な感情を大事にしよう
僕はこの話を見たとき、すごく素敵だなって思いました。
基本的に製品を開発するときは、「合理性」が軸になりますよね?
でも暦本さんは、「使っている人が幸せな気分になりそう」という想いを軸にして、ハピネスカウンターを発明したわけです。
合理性を追い求めるだけじゃなく、純粋な感情に任せた、愛を感じる発明がもっと広がるといいなと思いました。
では最後に、暦本さんの妄想に対する想いをご紹介して、終わりにします。
妄想には多少なりとも非常識な面があるので、すぐに「それいいね!」という同意は得られない。利便性に背を向けた「なかなか開かない蓋」という妄想もまさにそうだった。すぐには理解されないし、考えた本人も「それが何になるんだ?」 と思ったものだ。
しかしやってみると意外と面白いし、応用範囲も広がった。(中略)
冷蔵庫だけにとどまらず、今後は「スマイルウェアな家電」という商品カテゴリーさえ創出するかもしれない。妄想には、そういうパワーがある。
引用:妄想する頭 思考する手
まとめ
はい、以上で妄想する頭 思考する手の解説を終わりたいと思います。
今回の解説で、「真面目な課題を設定した上で物事に取り組むことも必要だが、妄想を起点とした取り組みも必要なんだよ」という暦本さんの想いが伝わっていれば幸いです。
また、今回は本書の大枠をお伝えするために、省略しているエピソードがかなりあります。
特に、「アポロ計画を実現させたヤバい妄想」というお話は、パワフルな妄想が起点となっており、とても面白かったです。
本書に興味を持った方は、ぜひお手に取って読んでみてください。
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はい、では以上になります。
最後まで見ていただき、ありがとうございました!