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こんにちは、TKです。
今回ご紹介する「デジタルとAIの未来を語る」は、「デジタルとAIを有効活用して、あらゆる人の意見を政策に反映させたり、労力のかかることを省いていったりして、皆にとって住みやすい世の中をつくっていきましょう」というオードリー・タンの想いをまとめた本になります。
デジタルとかAIと聞くと、「仕事が奪われる」とか「私達にはそんな関係ない」というネガティブな考えを抱く人もいると思いますが、そんなことはありません。
AIは確かに仕事を奪うかもしれませんが、それは良い意味で仕事を奪うだけですので、決して悲観するような技術ではないんです。
また、AIは今後さらに僕たちの生活に関わってくることは間違いありません。
詳細は後ほど解説しますが、AIは銀行の融資や病院の検査で多いに役立っています。
そんな内容の「デジタルとAIの未来を語る」を書いたのは、オードリー・タンです。
タンさんは台湾では非常に有名な方だと思われますが、日本での知名度はまだまだ低いと思いますので、ざっとタンさんの経歴を紹介しますね。
タンさんは1981年に台湾台北市に生まれました。
タンさんは、「心室中隔欠損症」という心臓の病気を患っていまして、感情が高ぶると、顔が紫になって倒れてしまうようです。
「心室中隔欠損症」が原因で周りと馴染めず、転校を繰り返し、3つの幼稚園と6つの小学校に通いました。
その後中学生になるもやはり周りと馴染めず、14歳のときに、もう学校に通わないと決意します。
台湾でも中学は義務教育ですが、それでも通わないと固く決心したそうです。
学校は14歳で辞めてしまったタンさんですが、ネットや本を駆使して独学を続けました。
そして15歳で、なんと出版社を起業。
18~19歳のときにはシリコンバレーで起業と、若いうちから頭角を現しガンガン行動するような方でした。
さらに33歳のときには、Siriの開発にも携わるなど、大きくテクノロジーの発展に貢献しています。
またコロナ渦中では、マスクが全国民にまんべんなく行き渡るよう、マスクマップというマスクの在庫をひと目で確認できる地図を作ったり、保険証やキャッシュレス決済を利用して、1人が買えるマスクを制限する対策を講じました。
また、このオードリー・タンという名前ですが、実は改名後の名前なんですよ。
元々は唐宗漢(とうそうかん)という名前だったのですが、心は女性だったため、オードリーという中性的な名前に改名したそうですね。
「心室中隔欠損症」や「性同一性障害」などの病気に苦しんできたタンさんですが、その経験が、多様な人を受け入れる心につながっていると、非常に過去をポジティブにとらえている素敵な方です。
このような背景を知った上で「デジタルとAIの未来を語る」を読むと、タンさんが心の底から平和な民主主義を望んでいることが理解できます。
今回はそんなタンさんが書いた「デジタルとAIの未来を語る」を以下2つの視点で解説します。
- AIはただのツール
- デジタルとAIが真の民主主義をつくる
この記事を最後まで読んでいただければ、デジタルとAIは僕たちに悪影響を与えるものではなく、より良い暮らしを実現するためのツールなんだと理解してもらえると思います。
難しい話もできるだけ簡単に解説しますので、ぜひお気軽にご覧ください。
デジタルとAIの未来を語る:2つのポイントで解説
「デジタルとAIの未来を語る」を以下2つのポイントで解説します。
- AIはただのツール
- デジタルとAIが真の民主主義をつくる
それぞれ簡単に解説しますね。
AIはただのツール
日本でAIの話をすると、どちらかというとネガティブな反応が多いですよね。
例えば以下のような感じです。
- AIに仕事が奪われる
- 2045年にAIが人間を超えてしまう(シンギュラリティ)
たしかにAIが発達すれば今あなたが取り組んでいる仕事が奪われるかもしれないし、2045年にはAIのほうが賢くなってしまうかもしれません。
しかし結論から言うと、そのようなことを不安に思う意味はないと、タンさんはバッサリと切り捨てます。
では、以下ではそれぞれの不安に関して、タンさんの考えを解説しますね。
AIに仕事が奪われる→人間にしかできない仕事は残る
AIが発達すればするほど、たしかに人手が要らなくなるのは事実かもしれません。
しかし、必ず残る仕事があるんですよ。
それは、「責任を取る」という仕事です。
例えば本を出版する前には、「誤字脱字がないか・質は高いか」という編集作業があります。
この編集作業をAIに任せることはできるのでしょうか?
結論から言うと、部分的なところを任せることはできるが、全てを任せることはできないでしょう。
AIを使えば、誤字脱字のチェックはできるでしょうし、いずれは、人を惹きつけるような文章に直すことも自動で出来るようになるかもしれません。
ただ、最終的に出版の決定をするのは、人間にしかできませんよね。
なぜならAIに責任は取れないからです。
「AIが出した結論でいくのかどうか?」という判断だけは、必ず人間が行います。
人間は完璧じゃないので、人間が作ったAIもまた完璧じゃありません。
だから、AIに頼るだけでOKなんてことにはならないでしょう。
以上のように考えると、AIに全ての仕事を取られるなど、ありえないことだとわかりますよね。
人の仕事はよりクリエイティブになる
全ての仕事がAIにとられるようなことはないと確認できましたが、1つ注意点があります。
それは、今後求められる仕事は、よりクリエイティブになるということです。
例として、銀行融資にAIが使われる例を見ていきましょう。
今回のコロナの影響をキッカケとして、銀行が政府から「影響を受けた企業に、貸付ローンを行ってくれ」との委託を受けたんですね。
しかし多くの銀行は審査業務に追われて、なかなか委託された仕事をさばけませんでした。
そんな中、ある銀行は全体の委託量の4分の1の案件を引き受けたんですよ。
なぜそんなことができたかというと、AIに審査業務を任せていたからです。
以前にローンを貸した経験がある方が再びローンを申し込んでくる場合、また同じような条件で貸付を希望する傾向がありました。
そのような人はAIで審査業務をすることによって、審査にかかるコストを大幅に下げることに成功したそうです。
結果的にその銀行は、AIのおかげで業務の3分の1をコストカットできました。
しかし残った3分の2の仕事は人がやらなければいけないので、結局人の仕事は必ず残ります。
AIはあくまでも「ツール」です。
すべての仕事が無くなるなんて話は、SFチックで非現実的だと思って下さい。
ただ、残った仕事はAIで処理しきれなかった「クリエイティブな仕事」です。
従って、AIの登場によって求められる仕事のレベルが上がるのは間違いないかと思います。
クリエイティブな仕事も絶対できる
今までの話を聞いて、
自分にはクリエイティブな仕事なんてできないよ…。やっぱりAIによって自分の仕事はなくなるんだ…
と思われたかもしれませんが、それは心配し過ぎかと思います。
そう主張する理由は、人々は今まで何度も産業革命を繰り返してきましたが、そのたびに新しい仕事は生まれましたし、人々はその新しい仕事に順応してきたからです。
例えばコンピューターを例に考えてみましょう。
コンピューターの登場によって、僕たちの仕事は一変しましたよね?
簡単に情報を送りあえるようになったし、計算も自動でやってくれるようになりました。
その結果、そろばんなどのアナログ的道具の需要は一気に減少したと思います。
余談ですが、僕が経理として働いていたときに聞いた話をしますね。
現在60歳強の部長は、コンピューターが普及する30年ほど前はなんと、そろばんで計算していたみたいです!
もし当時そろばん工場で働いていたら、仕事が無くなってしまったと思います。
ですが今を見て下さい。
コンピューターを使った仕事は山のようにありますし、国民のほとんどがコンピューターを使えるスキルを持っていますよね。
ここでいうスキルとは、大したものじゃないです。
ローマ字入力ができるとか、エクセルが使えるとかその程度の話ですからね。
こんな感じで、昔の人からしたらクリエイティブと言える仕事を、現代人は当たり前のように行っています。
最初は戸惑うかもしれませんが、人は適応能力が高い動物です。
AIによって新しく生まれる仕事に人は順応していけるはずだと、僕は思っています。
クリエイティブな仕事は楽しい
また、仕事はクリエイティブになればなるほど楽しいです。
理由は、「自分で考える余地が増えると同時に、達成感も増すから」ですね。
例えば以下2つの作業、どちらのほうが楽しいですか?
- 作り方が決まっているLEGO
- 作り方が自由なLEGO
当然、自由に作る方が楽しいですよね。
要するに何が言いたいかというと、AIの登場によって人の仕事はよりクリエイティブになると同時に、仕事の達成感も高まるということです。
やり方が決まっているような仕事は、AIがササッと処理してくれるので、人間は楽しいクリエイティブな仕事だけやればよくなります。
だからAIの普及を悲観する必要なんてありません。
AIの普及はむしろ僕たちの世界からつまらない仕事を消してくれると、ポジティブに捉えられると、この先の未来をより楽しめると思います。
2045年にAIが人間を超えてしまう(シンギュラリティ)→考えを飛躍させすぎ
2045年には、AIが人間より賢くなるなんてことが言われていますよね。
タンさんはこの議論を、「考えを飛躍させすぎ」だとバッサリと切り捨てています。
タンさんはシンギュラリティの良し悪しを考えることは、「核戦争が起きて大気圏全体が放射能に覆われて、ゴキブリ以外が生きていけなくなったら、それは良いか悪いか?と聞いているようなもの」と切り捨てているんですよ。
要するに、「お前は話を飛躍させすぎなんだよ」ということです。
タンさんは、「起こる確率が極めて低そうな事態をいちいち考えても、時間のムダに過ぎないから、もっと建設的な意見を考えようよ」ということを言いたいのだと思います。
大事なのは、進みたい方向を決めること
シンギュラリティにあたふたしても、良いことなど1つもありません。
大事なのは、「AIを使って何をしたいのか?」という方向性を考えることです。
AIを使って実現したいことは、抽象化して言うと、僕たちの生活をより良くすることですよね?
そのような方向性を持ってAIを開発していけば、AIは僕たちにとって便利なツールで有り続けるはずです。
賢くなりすぎて、人間を襲うなんてありえません。
そんな発想は、映画の見すぎだと思って下さい。
改めて強調しますが、AIはただのツールです。
「AIはどのように発展させて、どのように使うのが人にとって良いのか?」ということを考えればいいんですよ。
ネガティブな発想を持つことは、あなたにとっても社会にとっても、悪影響しかないということを、胸に刻んでおいてください。
- AIがいくら発展しても、責任を取る仕事は人間にしかできない
- AIの発展によって、人の仕事はよりクリエイティブになる
- クリエイティブな仕事は、あなたでも必ずできる
- シンギュラリティにおびえている時間などムダ
デジタルとAIが真の民主主義をつくる
タンさんが目指す未来を簡単にまとめると、「デジタルとAIで真の民主主義を作り上げること」となります。
ここで言う民主主義とは、「国民の意見をまんべんなく反映し、誰にとっても住みやすい世界」のことを意味しているんですよ。
民主主義は建前上、国民の意見を世の中に反映していることになっていますが、実際はそうなっていませんよね?
ニュースやSNSを見ればわかるとおり、毎日のように国民の不満が垂れ流されています。
そのような不健全な状態を、デジタルとAIで解決したいというのが、タンさんの想いです。
以下では、タンさんがデジタルとAIで民主主義を作り上げている実例を解説しますね。
国民の声がキッカケで、プラスチックストローが禁止に
台湾には、「vTaiwan」というサービスがあります。
「vTaiwan」はオンライン討論プラットホームと呼ばれており、要するに、国民と国が一緒になって討論しあえる場を提供しているサービスです。
タピオカミルクティーが流行りだしたときに、「I love elephant and elephant loves me(私は象が好き、象は私が好き)」という愉快なハンドルネームから、プラスチックストローを禁止してほしいとの書き込みがありました。
そしてその声に対して、5000件以上の署名が集まったので、本格的に国の課題として取り組むことになったそうです。
補足しておくと、5000件以上の署名が集まったら、必ずその課題に取り組むというルールがあります。
こういう明確なルールがあるから、国民は信頼して「vTaiwan」を使えるわけです。
そして結果的に、2019年7月にプラスチックストローは法的に禁止となりました。
このように、国民の声がちゃんと政策に反映される仕組みが整っているんですよ。
すごいですよね。
声を上げたのは、16歳の少女
さらにこの話には続きがあります。
「I love elephant and elephant loves me(私は象が好き、象は私が好き)」という愉快なハンドルネームで書き込みをしたのは、なんと16歳の少女だったんですよ。
まだ選挙権もない少女が法律を作るキッカケになるなんて、日本じゃ考えられないですよね。
このように台湾では、国と国民がインタラクティブな関係になっています。
しかも声を上げるのに、年齢は全く関係ありません。
このようなインタラクティブなプラットフォームが、日本にもできたらいいのにと思いました。
インタラクティブがトップに立つ人をも変える
国と国民が相互に意見を言い合えるインタラクティブな関係が作られると、政治のトップに立つ人も変わってきます。
具体的には、喋りが上手い人から、聴くのが上手い人に変わっていくんですよ。
一方的にしか情報を伝えることしかできない時代では、どうしても、喋りが上手い人の印象が良くなります。
しかしインタラクティブなプラットフォームができれば、人の話をちゃんと聴いて実行できる人のほうが、国民からの印象が良くなるのが、なんとなくイメージできますよね。
例えば現在の台湾のトップは蔡英文(さいえいぶん)という女性が務めているのですが、実は彼女、タンさんによると口下手らしいです。
なのでスピーチを聴く限りでは、彼女の魅力は伝わりません。
しかし彼女はネットを介して人々の意見に耳を傾けることに関しては、優れた能力を持っていたんですよ。
今までだったら、蔡英文(さいえいぶん)のような地味なタイプの方は、トップに立つことができませんでした。
しかしインタラクティブな仕組みが整ったことで、彼女のようなタイプでもトップに立つ世界が実現したのです。
誰も置き去りにしない
このようにインタラクティブな仕組みが整うことで、誰も置き去りにならない社会が形成されていきます。
ある日、男の子を育てるお母さんからある1通のメールが、コロナウィルス対策ホットラインに届きました。
どんな内容かと言うと、「ピンクのマスクをして息子が学校に行ったら、笑われてしまい、息子が恥ずかしい思いをした」というものです。
これ、日本だったらどうでしょうかね?
おそらく、無視されて終わると思います。
しかし台湾の政府は粋な対応をしました。
なんと翌日の記者会見でコロナウィルスに関する話をする際に、ピンクのマスクをつけて会場に現れたんですよ。
この動きによって、SNSのロゴや企業のロゴにピンクを差し込む動きが活発化し、ピンク色が世間に受け入れられるようになりました。
素敵な話ですよね。
オードリー・タンが目指す未来
このように、「マイノリティの人たちがマジョリティに助けを求めれば、マジョリティは快く助けてあげる社会」がタンさんが目指す未来と言っていいでしょう。
そしてデジタルやAIは、マイノリティの人たちの声を社会に反映するツールとして大活躍します。
決して、人々の生活に悪影響を及ぼすものじゃないんです。
「仕事が奪われる」とか「自分たちより賢くなる」みたいな不毛な議論はもうやめて、「どうすれば皆が住みやすい社会を作れるか?」という視点で、議論が進んでいけば、日本も台湾のように素敵な光景が広がるのかなと思いました。
- タンさんは、デジタルとAIで真の民主主義をつくりたいと思っている
- インタラクティブが、若い声も政策に活かされるキッカケとなった
- デジタルとAIを有効活用すれば、誰も置き去りにしない社会がつくれる
デジタルとAIの未来を語る:まとめ
今回は、「デジタルとAIの未来を語る」を2つのポイントで解説しました。
- AIはただのツール
- デジタルとAIが真の民主主義をつくる
デジタルとAIによって、マイノリティの声が国のトップに反映され、誰もが住みやすい社会が形成されるイメージが伝わっていたら嬉しいです。
なお、タンさんの描く未来をザックリと伝えるために、省略している部分がかなりあります。
これからの未来を考えるキッカケをつくりたい方、タンさんの描く未来に共感した方は、ぜひ本書を手にとって読んでほしいと思います。
目次
- はじめに
- 序章 功を奏したITによる新型コロナ対策
- 第一章 私をつくってきたもの
- 第二章 デジタル民主主義とソーシャル・イノベーション~誰もが政策に寄与でき
- る社会
- 第三章 ITは教育をどのように発展させるか~プログラミング思考を身につける
- 第四章 AIが開く新しい社会~デジタルは人のためにある
- 第五章 日本へのメッセージ
(2024/10/05 06:36:08時点 Amazon調べ-詳細)
では、以上です。
良き読書ライフを!