現代はあまりにも選択肢が多すぎて、何に注力すれば幸せになれるのかが分からない。何をしていても、失われた機会が存在するというモヤモヤが頭から離れない。そんな時、人は「これを信じれば間違いない」という対象を見つけると、我を忘れて没頭してしまう。そうする方が楽だから。
今回ご紹介する『イン・ザ・メガチャーチ』は、推し活を主軸としながら、視野狭窄に陥る幸福と不幸を描いています。
さすが話題になっているだけあってトレンドのテーマを上手く取り入れていますし、描かれている人間模様も深みがあります。
「推し活にハマっている人」にも「推し活している様子を冷静に眺めている人」にも刺さる『イン・ザ・メガチャーチ』から、個人的に伝えたいことを軸に書評をしていきます。
人は物語に熱狂する
何を信じれば幸福になれるのか分からない時代だからこそ、「これを信じればいい!」という物語を見つけた時、人は極度に熱狂する。そんな性質を利用して、意図的に熱狂的なファンを作らせる側の視点や、逆に熱狂的になった側の視点が『イン・ザ・メガチャーチ』では描かれております。
一方の視点ではなく両者の視点から描かれるから、より深みを感じながら読み進められるわけです。
タイトルにもある「メガチャーチ」とはライブ感のある礼拝を意味しているようで、僕らが想像する粛々とした礼拝とは感じが違うようです。メガチャーチは多くの人を熱狂に陥れることができるがゆえに、金集めに使われることもしばしばです。
本質的には無意味、低価値、無関係なものを、団体が発信するストーリーによる権威付けと信者の視野狭窄によって価値が高いと思い込ませて、本来の価値以上の対価を支払わせる。
出典: イン・ザ・メガチャーチp329
で、『イン・ザ・メガチャーチ』を読んでいて思ったのですが、視野狭窄に自分が陥っていると自覚的な信者も多数いるだろうなということです。
みんながみんな、完璧に信仰先を信じ切っているわけではなく、どこか自分を俯瞰して「これでいいのかな?」と不安に思う。
でも、何も信じない、何にも没頭しないよりはマシ。そんな感覚を抱いている人が世の中にはたくさんいるような気がしています。
人生は「やってこなかったこと」が還ってくる
主人公の1人である久保田は、「やってなかったこと」に後悔する中年男性として描かれます。久保田は娘との対話を蔑ろにし続けたことで、結果的に孤独な中年男性になりました。
この描写がですね、僕の心をそっと抉りました。
本当はやるべきだとわかっていたけど、チャレンジするのが怖くて避け続けてきたことが僕にはあります(まあ、誰でもあると思います)。最近になってようやく現状を打破する一歩を踏み出したのですが、ハッキリと「後ろめたさ」が消えましたね。
やるべきことから逃げ続けると、後ろめたさは一生付きまとうし、いずれはクッキリとした形で表面化するものです。
そんな感覚をリアルに描写できる朝井さん、さすがプロですね、、、。
推し活は悪いことばかりではない
『イン・ザ・メガチャーチ』では推し活の負の側面が多く描かれていますが、ちゃんと良い側面も描かれております。
また、一歩踏み出した人間が見ることのできる輝く世界も描かれていますから、読んでいて心が暖かくなる瞬間もたくさんありました。
このように、多角的に1つのテーマを描いた本に出会えると嬉しい気持ちになりますね。
ポイントまとめ
では、書評のポイントを簡単にまとめます。
- 推し活の良し悪しが多角的に描かれている点がGOOD
- 人生は「やってこなかったこと」が還ってくるもの
では、良き読書ライフを。

