こんにちは、TKです。
今回ご紹介するのは、東島 威史さんの著書『不夜脳』です。
本書では、寝ると認知症のような病が防げるけど、それ以外の方法もあるから知っておこうよという内容が書かれております。
「脳の疲労を回復するには睡眠が必要だ」というのが、世間の常識ですよね。
もちろん睡眠は必要ですし、その点を否定することはしません。ただ、睡眠にとらわれるあまりに過度な不安が生じたり、他の方法で脳を回復させる方法が疎かになってしまっているので、そのことを東島さんは憂いているわけです。
本書は健康本ではあるものの、熱い想いや詩的な表現があってですね、読み物として楽しめたのが良かったですね。
また、考え方で睡眠の満足度が変わるデータなんかもあって、とても勉強になりました(記事内にてこのことに触れます)。
今回はそんな本書を、僕の感想を交えながら紹介していきます。
- 著者『東島 威史』さんの人物像
- 『不夜脳』の厳選ポイント
では、ゆっくりとご覧くださいませ。
著者『東島 威史』さんの人物像
東島威史さんは、脳神経外科医であり医学博士です。
横須賀市立総合医療センターの「ふるえ治療センター」でセンター長を務め、てんかんやパーキンソン病、手足の震えなど、脳の機能的な障害に取り組んでいます。
神経再生促進因子「LOTUS」とてんかんの関係を研究するなど、脳の可能性を科学的に探求してきました。
一方で、なんと麻雀プロとしても活動し、子ども麻雀教室を通じて「遊びが脳を育てる」ことを実証しようとしています。
医療と遊びという一見異なる分野をつなぐその発想は、脳の“生かし方”を広く示すものです。他にも、ポケモンGOを治療に応用する話が本書には書かれていまして、きっと楽しい方なんだろうなぁと思えましたね。
脳を理解することで人をより豊かにする――その柔軟な挑戦が、僕たちの“眠らない脳”に静かな刺激を与えてくれます。
不夜脳:3つのポイントで解説
『不夜脳』を以下3つのポイントで解説します。
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暗闇実験
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睡眠は「理想と現実の差」が重要な要素
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脳疲労はバランスの乱れ?
それぞれ簡単に解説しますね。
暗闇実験
脳は刺激が無いことで衰えるという事実を示唆する実験がありまして、個人的に興味を持ったのでご紹介します。
フランスの地質学者ミシェル・シフレは、自らの体を張って「時間生物学」の実験をした。完全ではないが太陽光を遮断した洞窟の暗闇の中に入り、人との接触などをなくした状態、なんと約2ヶ月も生活したのだ。(中略)すると彼の1日は約25時間になり、日時の経過間隔もずれて、1ヶ月経っていても「まだ半月くらいしか経っていない」と感じていた。
出典:不夜脳41p〜42p
この実験を踏まえて東島さんは、「暗闇の中では普段得られる情報量が半分ほどなので、半月しか経っていないと感じたのでは」と推測しています。
そして、このように刺激が少なくなると人はやがて耐えられなくなり、脳は自ら刺激を生み出します。まあ、幻覚や幻聴といった症状のことですね。また、刺激を受け取る認知機能も衰えてていくといったように、悪いことばかりが起こっていきます。
だから僕たちは、このように脳が異常な状態にならないよう、ある程度の刺激を与えていく必要があります。
東島さんは刺激の候補として幾つかの例を挙げているのですが、ここでは「読書」を取り上げます(そういうブログですからね)。
読書は基本的に言語情報といった抽象的な情報しかないので、あらゆる情報を補完する必要があります。登場人物1人とっても、それぞれが想い描く顔や身長はバラバラですよね。こういった脳内の作業においては、前頭前野や側頭葉といった部分が大いに活用され、結果的に理解力や精神コントロール力が高まるのですね。
特に小説のような没入できるようなジャンルが良いらしいので、これは小説好きの僕からしたら嬉しい情報でした!
睡眠は「理想と現実の差」が重要な要素
どれだけの睡眠時間を確保するかという要素は、健康において重要性が高いのは言うまでもありません。
ただ、それだけではなく、理想と現実の差が結構重要では?ということを示す研究がありますのでご紹介します。
まず、「あなたは前の夜、何時間眠りましたか?」という調査結果を見ると、日本は自己申告の睡眠時間がインドネシア(6時間12分)に次いで最も短く平均6時間18分。最長国のフランスは7時間52分だから結構な差ではある。
次に、「理想の睡眠時間は何時間だと思いますか?」という設問には、ぐっすり大国のフランス人たちは「8時間30分は寝たい」と答えており、ヨーロッパのほとんどの国の人たちも「8時間以上」を理想としている。では、睡眠不足大国・日本はどうかと言えば「7時間50分が理想です」と、8時間を切っていた。
この話が面白いのはここからだ。睡眠の「理想と現実のギャップ」が少ない国の人ほど、「健康状態が良い」と答える傾向にあったのである。
出典:不夜脳62p
いやあ、この話は全てに通ずるような気もしますよね。
東大に入りたいと願っていた人は、慶應に入学できたとしても不幸になってしまうイメージです。
ただ、これを「理想を下げればいい」という単純な話と捉えないでほしいんですよ。理想は高く持ってもいい、ただ、それを達成できなくても過度に落ち込まなくてもいいという話なんです。
そして、こういう心構えは一朝一夕で身につきません。たくさんの経験をして、たくさんのストーリーを知ることで、理想という概念を正しく抱けるような気がするのです。
だから僕は、小説が好きなんですよ。理想に敗れる人がたくさん登場しますが、理想に向かって邁進したことが美しいと理解できるので。
脳疲労はバランスの乱れ?
「おお!なるほど、これは活用できそうだ」と思えたお話がありますのでご紹介します。
脳は使用している部分に血流が多く流れ、酸素消費も多くなるこ仕組みになっている。バランスの崩れ、とはイメージの問題ではなく、実際に血流のバランスも悪くなり、代謝も特定の場所に偏っているということだ。つまり、「脳疲労」の正体とは、2つのパターンが考えられる。
①血流や代謝が集中している部位が、それ以上の刺激を拒んでいる
②血流や代謝が低下した部位が、刺激を求めている
①か②か、もしくはその両方か。僕自身の経験からは、②という実感がある。
出典:不夜脳p75
ずっと計算や思考ををしていると左側頭葉という部分ばかりが使われるので、適度に音楽や絵などを楽しんで右側頭葉を刺激することで、脳の疲れが溜まりにくくなるというわけですね。
これを聴いて思ったのは、やはり何事もバランスが欠かせないということです。
運動は健康に良いが、やりすぎると良くない。好きな人とのやり取りは幸福を感じさせてくれますが、過度な干渉は疲れを引き起こします。
多すぎてもダメだし、少なすぎてもだめ。この発想が脳にも当てはまるですね。
世界ってほんとバランスが支配しているなぁと思えました。
不夜脳:まとめ
今回は、『不夜脳』を3つのポイントで解説しました。
なお、今回ご紹介したことは本書のごく1部分で、まだまだ伝えきれていない事がたくさんあります。
興味を持った方は、ぜひ本書を手にとって読んでみてください。
目次
- 序章:脳は眠らない
- 第1章:刺激不足で脳は廃れる
- 第2章:脳の休息と睡眠
- 第3章:「疲労しらずの脳」の鍛え方
- 第4章:不夜脳を癒す
では、以上です。
良き読書ライフを!



