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書籍レビュー

【民主主義は無意識に任せろ!】「22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる」は、政治を根底から変えてくれる革命性がありました

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こんにちは、こんばんは、TKです。

今回解説させていただく本は、成田悠輔さんの著書「22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる」です。

本書は、「今の民主主義は何もかもめちゃくちゃだから、俺が新しい形の民主主義を考えてみたよ」という感じの本と思ってもらえれば間違いないです。はい、待望の成田悠輔さんの本が出ましたね。

成田悠輔さんと言えば、忖度抜きの切れ味鋭い発言をする方として有名です。例えば、「日本の格差を無くすためにはどうすればいいですか?」という議題に対して、「格差はもっと作るべき」という返しをしたときは惹き込まれましたね。もっと格差を広げる、つまりはめちゃくちゃな金持ちを生み出すことで豊かな国を作ったほうがいいという感じの話をしていました。こんな感じで、かなり独特な主張をされる方なんですけど、決してなんの根拠もなしに自分の意見を言っている方ではありません。

むしろ、めちゃくちゃしっかりした根拠に基づいて話している方なんですね。成田悠輔さんは何をしている方かと言うと、データ分析によってビジネスや政策の方向性を導いている方です。したがって、本書もかなりしっかりしたデータがたくさん載っています。だからこそ、結構めちゃくちゃに聞こえる話をしているのですが、皆信頼して聞けるのだと思います。今回の動画では、まず本書の要約を簡単にお伝えします。そして要約の後に、僕が個人的に気になった部分を取り上げて深掘りしていきます。

要約

では、要約のお話をしていきます。まず、本書の流れをめっちゃ簡単に言います。最初にあるデータを踏まえた上で「民主主義はオワコン」という話をします。次に、そんな民主主義と真面目に闘争して、民主主義を改善していく方法について語っています。次に、闘う闘争ではなくて、逃げる逃走の話をします。真面目に闘うのが何かバカバカしいから、逃げちゃうのもありだよね的な感じです。最後に、闘う闘争も逃げる逃走も根本的な解決にはなっていないから、俺の得意なデータ分析を用いて民主主義の在り方を「無意識」にシフトしてみたらどうかな?というお話をしています。まあ、いきなり民主主義を無意識にシフトするとか言われても意味がわからないと思いますので、今の時点では理解できていなくてOKです。では、詳しい内容について簡単に見ていきましょう。

まず、民主主義がオワコンというお話です。成田さんはいろんなデータを用いてですね、民主主義がオワコンであることを示しています。具体的なものを一つ挙げると、民主主義的な国ほど、ここ最近の経済成長率が低いことがしめされています。こんな感じで、他にもあらゆる切り口から民主主義がオワコンになっている事を淡々と指摘していきます。じゃあ、なんで民主主義の国はオワコンになってしまったのか?その理由として成田さんは、IT革命の始まりを挙げています。民主主義が低迷し始めたのは2000年前後でして、その時期の大きな出来事がIT革命になります。このIT革命によって一気に広まったのが、SNSです。このSNSが広まったことにより、票集めのやり方は一気に過激化します。最近の政治を見ていると、政策の中身と言うよりも、キャラがある人が当選していますよね。つまり極端に言えば、中身がなくて、かつ短期的な話をする人が受かりやすくなっているということです。そんな人達が国を動かせば、何となく国が劣化していく感じがしますよね。

じゃあ、終わった民主主義をどう変えていけばいいのか?成田さんが1つ目の案として出しているのが、闘うという意味の闘争です。今の民主主義を形作っている部分を改善していって、良い民主主義にしていこう的なお話となります。具体的な1つ挙げると、SNSの規制のお話がありました。SNSの過激化がキャラの強いだけの政治家を生んでしまうから、SNSにもっと規制を入れるべきだという主張です。こんな感じでいろいろな改善策を提示するんですけど、最終的には「そもそも選挙で何か決めるっていう固定概念がおかしくね?」という話をし始めてですね、じゃあいっそのこと民主主義から逃げちゃおうかという話に移っていきます。つまり、闘う闘争の話ではなく、逃げる逃走のお話です。結論から言うと、国を抜け出して新しい国を作って、そこで新しい政治形態を作っていこう的な話を繰り広げていました。ただ、こんな事をしても問題からただ逃げているだけですし、新しく国を作るとか非現実的すぎですよね。まあ成田さんも、大真面目に逃走の話をしているという感じではなく、極端に考えればこういうこともあり得るよねという軽い感じで話されているように受け取れました。

そして、ここまでの闘う闘争と逃げる逃走の話を踏まえて、最後に構想のお話をします。実はここまでの話は前座にすぎず、本当に成田さんが伝えたいのは構想のお話になります。この構想とはどういう意味かと言うと、「民主主義の新しい形を作っていこう」という意味になります。で、その新しい民主主義の形がなんなのかと言うと、「無意識に頼る民主主義」です。はい、ちょっと意味がわからないと思いますので、説明しますね。今僕たちは、意識して政党や政治家に投票しますよね。でも冷静に考えたら、このやり方で民意がちゃんと政治に反映されるわけがないんですよ。まず、選挙の投票率は50%前後しかないので、この時点で半分の人間が切り捨てられています。また、そもそも政党や政治家に投票するというのも無理があります。僕たちの生活に関係する政策は無数にあるにも関わらず、僕たちが選べるのはたった1つの政党、たった1人の政治家です。そんなはかない1票に、僕たちの想いを全て反映させることなど不可能ですよね。だからこの際、無意識に頼っちゃおうと成田さんは言います。もう少し簡単に言うと、僕たちの生活のあらゆる視点からデータを取って、僕たちが本当に望む政策を浮き彫りにしようということですね。そして、データを取って分析するのは大変だから、そこは機械の力に任せちゃいます。つまり、僕たちの想いを無意識のレベルから機械に汲み取ってもらって、その想いに応えるための政策も機械に考えてもらう。想いを表現するのも無意識に、思いに応えるもの無意識に。人間の意識をなるべく介在させないこの民主主義を成田さんは「無意識民主主義」と名付けました。

ここで本書のタイトルを思い出してほしいのですが、「政治家はネコになる」と書いてありますよね。この「無意識民主主義」が、ネコの話と繋がってきます。政治家が国民の想いを汲み取ったり、票集めのためにキャラを作ったり、政策を実行したりしていますが、そういう仕事が成田さんのお考えの上ではなくなるわけです。ただ、政策のわかりやすい発信元がいないと何となく不安だから、ネコにでもやらせておけばいいという感じですね。はい、以上が本書の簡単な要約になります。無意識レベルの想いを汲み取ったり、その想いから政策を考えたりすることなんてできるの?と思われたかもしれませんが、技術上は結構可能みたいです。僕の感想を少し言わせていただきますと、実現できるかどうかは別として、すごく理にかなった発想だと思いました。僕たちが抱える微妙な想いとか感情ってうまく言語化できませんし、それを選挙というたった1つのイベントで表現することなんてできません。だから、常日頃からデータを取ってもらって、本当に生活に根ざした政策を作ってくれるのは良いんじゃないかなと思いました。まあ、データを機械的にとって、政策を機械的に決めることはかなりドライな発想ですから、もちろん賛否両論あると思います。あなたはどう思ったでしょうか?感じたことがあれば、ぜひコメント欄で教えてください。では次に、本書から気になった部分を2つ抜粋して考察していきます。

具体的に必要な行動は何なのか?

1つ目が、「無意識民主主義」の実現のために、具体的に必要な行動は何なのか?ということですね。アルゴリズムによる「無意識民主主義」の素晴らしさや、その実現可能性について語ることが本書の目的であって、実はこの発想を具現化するための具体的な行動については触あまり触れられていないんですよ。つまり、「無意識民主主義」の実現にあたって成田さんは、特に具体的な行動を起こしてはいません。そう思った根拠は以下の文章が記載されていたからです。

この本はちょっとただのビジョンすぎる気もする。「おしゃべりばかりか。ちょっとは具体的な取り組みや実践を見せてみろ」と言われそうだ。だが、そんな21世紀の人類っぽいことは言わないでほしい。歴史を振り返っても、ルソーの『社会契約論』からマルクスの『資本論』まで、結果として最も影響力を持った構想や思想は最も実践が伴っていないものだという経験則がある。自室や図書館で鬱々と妄言を綴る無力で口だけの想像者たちだ。この本はその悪しき伝統にならってみたい。口だけの私が実践者に見下され、嘲笑され現実に追い越されるのを楽しみにしている。

出典:22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる

はい、なんだか無責任な発言にも聞こえるかもしれませんが、このスタンスはありだと思いましたね。方向性を示すことが得意な方もいれば、その方向性を実現することが得意な人もいますからね。成田さんは異常なほど頭が良いですから、方向性を示すことは間違いなく得意だと思います。ただ、その方向性にあらゆる人を巻き込んで実行することに関しては、別の人がやったほうがいいと思っているのだと感じました。

以上を踏まえて僕がお手伝いできることは、本書の存在を1人でも多くの人に伝えることだと考えました。本書の内容はかなり画期的であり、中には本書の内容を具現化するために政治家や革命家のような存在になって、ビジョンに共感してくれる人を増やそうと熱心に取り組む人が出てくるかもしれません。僕はそういった熱量がないので結局人任せになってしまうのですが、熱量が高い人にこの本の存在が知られるように、ブログやYouTubeを通じて発信をしますし、あなたもぜひ周りの人に本書の存在を教えてほしいと思います。たとえ周りの人が具体的な行動を起こさなかったとしても、本書の存在を知った人が、「無意識民主主義」の実現を願う有権者になる可能性はありますからね。

IT企業の頑張りが重要?

2つ目が、IT企業の頑張りが「無意識民主主義」の実現の鍵になる。ということですね。どういうことかと言いますと、IT企業の頑張りが、アルゴリズムに支配される環境を受け入れる空気感に繋がるということです。成田さんが構想している「無意識民主主義」とは、言ってしまえば意識への諦めであり、無意識な部分を機械的に分析したほうが理にかなっているという話なんですね。ただ、これって何となく嫌な感じになる主張にも思えますよね。

いくら機械的に判断してもらうのが良いって言っても、何でもかんでも機械に判断されると、なんだか自分の意識に対する尊厳が傷つけられているような気もします。しかしですね、意外と機械的な判断を現時点でも僕たちは受け入れていると思うんですよね。例えばあなたが買う商品や見るアニメなんかも、実は機会による誘導であることも多いです。サイトを見ていると、「あなたにおすすめの何々はこちら!」みたいな表示って結構見ますよね。あれはあなたのパーソナリティを機械的に分析され、機械的に商品をおすすめされているわけです。以上の話を踏まえて必要になるのが、IT企業の頑張りです。具体的には、Apple Watchの機能が良い例となります。ちょっと昔のCMになるのですが、エスカレーターを使おうとすると、腕が階段のほうに引っ張られるワンシーンがあるんですよ。まあ、ホントに腕を引っ張る機能は流石ないのですが、健康に関するデータを取ってくれたり、健康に関するアドバイスをしてくれたりします。

これって、機械に行動の一部を支配されていますけれど、意外と嫌に感じませんでした。なぜなら、結果的に良い行動を取れているからです。このようにですね、機械に行動を左右されることが当たり前という感覚が根付いていくことが、成田さんの構想の実現には必須だと思いました。成田さん自身も機械に支配される感覚が浸透することは重要と考えていまして、本書で以下の文章を書き残しています。

民主主義による政策決定のほとんどは無意識に自動実行されるようになり、はじめはApple WatchのCMのように違和感を催すが、やがて慣れ、気づいたときにはそれが当たり前でもはや認識できなくなる。以上の話を踏まえると、本当に大事なのは政治家や革命家といった存在ではなく、IT企業の頑張りが最も重要なのかもしれませんね。IT企業は「無意識民主主義」の実現の為に頑張るわけではないが、結果的に「無意識民主主義」の実現の鍵を握っている。

出典:22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる

ホント世の中は複雑で難しくて、思い通りにならないものだと改めて感じました。

さいごに

はい、今回の解説は以上となります。「22世紀の民主主義」という固い言葉がタイトルにあったので、一見つまらなそうに感じますが、めちゃくちゃ面白かったですし納得感もありました。人に何かを説明する時は、根拠となるデータと斬新性が必要だと思わされました。また、個人的には「無意識民主主義」はぜひ実現してほしいと思いましたね。選挙という大した意見を汲み取れない仕組みに頼っている以上、政治によって世の中が良くなるイメージが全くありませんので。

なお、今回解説したのは本書の一部分であり、まだまだ紹介できていない部分はたくさんあります。興味を持った方はぜひ本書をお手に取って読んでみてください。

ありがとございました。またお会いしましょう。