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こんにちは、TKです。
今回ご紹介する「ビジネスの未来―エコノミーにヒューマニティを取り戻す」は、「物質的な豊かさはほぼ満たされているんだから、これからは経済成長を追い求めるんじゃなくて、衝動を軸に活動しようよ。そうすれば楽しく生活できるし、難しい問題も解決できる世の中を作れるよ」という主張を訴えている本です。
今の日本では、ほとんどの方が衣食住で何不自由のない生活を送れていますよね?
もちろん、日々の生活に困っている人がゼロだとは言いません。
ただし、仮にそういった人がいても、生活保護などのセーフティネットが整っている日本では、食べるものが無くて餓死するなんてことはほぼ起こりえません。
要するに日本人はすでに、物質的豊かさをほぼ満たされていると言えるんですよ。
にも関わらず、未だに製品の質を高めるために、日本人は必死に働いていますよね。
そんな日本人に対して本書は、「もう成長を追い求めて頑張るのはやめて、衝動を軸に行動しようよ」というメッセージを発信しています。
ここで言う衝動というのは、「自分の心の中から湧き起こる素直な感情」と思ってもらえればOKです。
後ほど詳しく解説しますが、この「衝動」を軸に行動すると、現在放置されている難しい問題も、解決される世の中を作り出すことができるんですよ。
本書は社会派の内容なので、ややとっつきにくいと感じられたかもしれませんが、言っていることはとても夢があり情熱があり、誰が読んでもワクワクするような内容になっていることは間違いありません。
著者の山口周さんの肩書を一言で表すと、「ナレッジキュレーター」となります。
「ナレッジキュレーター」って何?
と思いましたよね。
「ナレッジキュレーター」を日本語訳すると、「付加価値をつけた知識を届ける人」となります。
単純に知識を発信するだけでなく、自身の経験や考察を交えて発信するイメージですね。
実は山口周さん、電通とボストンコンサルティンググループという超大手で働いた経歴がありまして、さらに独学であらゆるジャンルの勉強を極めているので、知識と経験がものすごい方なんですよ。
本書を読んでいると、以下のようなところから、頭の良さがハッキリと伝わってきます。
- 例え話をするときに、イエスキリストの発言を引用する
- 戦争によって街が壊れたしまった様子を、「灰燼に帰す」と表現する
- 豊富なデータを用いて、説得力を高める
今回は、そんな「知の巨人」とも呼べる山口さんが書いた「ビジネスの未来―エコノミーにヒューマニティを取り戻す」を、以下3つのポイントで解説します。
- 成長はもういらない?
- これからは「衝動」の時代
- UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)を導入せよ
この記事を最後まで読んでもらえれば、成長を追い求めない、精神的に豊かな未来を頭の中に描くことができるようになります。
難しい話もなるべく簡単に解説しますので、ぜひお気軽にご覧ください。
ビジネスの未来―エコノミーにヒューマニティを取り戻す:3つのポイントで解説
「ビジネスの未来―エコノミーにヒューマニティを取り戻す」を以下3つのポイントで解説します。
- 成長はもういらない?
- これからは「衝動」の時代
- UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)を導入せよ!
それぞれ簡単に解説しますね。
成長はもういらない?
成長することって、素晴らしいことですよね。
昔の状態より優れた状態になるわけですから、誰だって、成長は気持ちが良いと感じます。
しかし、成長だけを追い求めると、必ず伸び悩み苦しい時期が来てしまうんですよ。
成長には限界がある
成長には、必ず限界があります。
例えば、身長で考えてみましょう。
中学生くらいまでは、毎年背が成長し続けましたよね?
しかし高校生になると伸び率が下がって、高校を卒業するあたりでは、もうほとんど背が伸びないという状況になったと思います。
仮に身長を伸ばすことを生きがいとしている人がいたら、その人は高校卒業をする頃に、成長できない自分に絶望しちゃうかもしれません。
でも冷静に考えたら、背が伸びなくなるのは「成熟した証拠」なので、むしろ喜ぶべきことですよね?
そうなんです、成長できないってことは「成長しきった証拠でもある」ので、決して悲観する必要なんてないんですよ。
身長が伸びることに喜んでいた人も、また他の喜びを探せばいいですからね。
要するに何が言いたいかというと、今の日本人は「成長しきっているのに、まだ成長しようとしている病」に陥っているということです。
高成長は未熟な証
山口さんの集計によると、G7と呼ばれる先進国7カ国のGDP成長率は、1960年代には5.5%ほどありましたが、2010年代には1%強にまで下がっています。
これだけ見ると、「うわー、成長率が下がっちゃてるね」と思われるかもしれませんが、先程の身長の話を思い出してください。
そうです、成長し続ければいずれ伸び率が下がって、最終的には成長しなくなりましたよね?
経済だって、理屈は一緒なんですよ。
今や2%の成長率でも低いと言われる時代ですが、仮に2%の成長率を続けることができれば、世界の経済規模は100年後には7倍にまで成長し、1000年後には3億9000万倍にまで成長することになります。
1000年後には、今に比べて3億9000万倍豊かになっていることなど、想像できますか?
あり得ないですよね。
要するに山口さんの結論は、「ビジネスは歴史的使命を終えつつある」ということになります。
今まで成長してこれたのは、「物質的な豊かさが未熟だっただけ」ということですね。
すでに成長の限界点に達しつつある今、成長の伸び率が低くなるのは当たり前で、悲観する必要なんてありません。
松下幸之助が目指した未来とは?
ここで、松下幸之助の使命について触れておこうと思います。
パナソニックの前の社名は「松下電器産業」というんですけれど、この「松下電器産業」を創業するにあたって、松下幸之助は以下のような使命を定めていました。
生産者の使命は貴重なる生活物資を、水道の水のごとく無尽蔵たらしめることである。いかに貴重なるものでも量を多くして、無代に等しい価格をもって提供することにある。かくしてこそ、貧は取り除かれていく。貧より生ずるあらゆる悩みは除かれていく。生活の煩悶も極度に縮小されていく。物資を中心として楽園に、宗教の力による精神的安心が加わって人生は完成する。ここだ、われわれの真の経営は。
要するに、便利な物を安く提供することが、松下幸之助の目指すゴールだったわけです。
そして、このゴールはほぼ達成されつつあります。
つまり何が言いたいかというと、これからは「経済成長を追い求める活動は減らしていって、他の目標を追い求める活動に転換するべき」ということです。
- どんな物事にも、成長には限界がある
- 先進国7カ国のGDP成長率を見れば、経済規模が成熟しつつあるのは明らか
- 経済成長を追い求める活動は減らしていって、他の目標を追い求める活動に転換するべき
これからは「衝動の時代」
「経済成長を追い求める活動は減らしていって、他の目標を追い求める活動に転換するべき」という主張に対して、
じゃあ、具体的に何を軸に活動すればいいの?
と思いましたよね。
結論から言うと、「衝動」を軸に行動すればOKです。
なぜ衝動を軸に行動するべきかというと、それは以下2つのメリットがあるからですね。
- 解決が困難な問題を解決できるから
- 楽しい人生を送れるから
それぞれ解説します。
「衝動」を軸に行動するメリット①:解決が困難な問題を解決できるから
世の中には、解決されずに放置されている問題が山のようにあります。
なぜそんなことになるかというと、問題を解決しても見返りが期待できないからです。
以下の図をご覧ください。
この図は、問題の難易度と需要の多さを表したものになります。
もしあなたがビジネスをやる場合、ABCDのどの領域に手を付けますか?
当然、Aの領域ですよね。
簡単に解決できて、しかも多くの人の役に立つわけですからね。
誰だって、Aの領域にある問題に取り組むはずです。
しかし、このようにビジネス的視点で問題に取り組もうとすれば、BCDの問題で苦しんでいる人が、放置されることになります。
特に、解決が難しいし、需要も少ないCの問題で苦しんでいる人は、完全に放置されちゃいますよね。
例えば、発症する人が5万人未満の病気は「希少疾病」と呼ばれます。
5万人というのは、人口比率で言えば0.05%未満の人が苦しんでいるということになりますので、その病気を治したいと思っている人数は少なく、ビジネス的には解決する価値が低いと判断できます。
とはいえ、見返りが少ないからと、苦しんでいる人を放置することが、人として正しい姿とは思えません。
ここで大事になるのが、「困っている人を助けたいという純粋な気持ち=衝動」なんですよ。
衝動に従って行動すれば、見返りなんて大した問題にはなりませんからね。
言っていることはわかるけど、お金の問題もあるし、そう簡単にはいかないでしょ。
と思われたかもしれません。
後で詳しく解説しますが、そのお金の問題は、UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)で解決できます。
まずは、衝動に従って行動すれば、ビジネス的に考えた時に解決されない問題も、解決されるということだけ押さえておいて下さい。
楽しい人生を送れるから
衝動を軸に行動すれば、楽しい人生を送ることができます。
すごく抽象的な理由になってしまいましたので、詳しく解説しますね。
多くの社会人は、「成長を追い求めて仕事をしている」という状態にあると思います。
言い換えると、「より良い製品を作ろう」とか、「売上を伸ばすための戦略を考えよう」という考えで働いている人が多いということです。
しかしこの発想で働いている限り、活き活きと働くことは難しい時代に突入しています。
なぜなら、先程も解説しましたが、経済的な成長はすでに限界点を迎えつつあるからです。
結果が出にくい指標を軸にして働いていても、楽しくないのは当たり前なのに、世間の人はその事実に気がついていません。
しかし、衝動を軸に行動すれば、楽しい人生を送れる可能性がグンとアップします。
なぜなら衝動には、限界点がないからです。
成長には限界点がありますが、衝動はただの感情ですから、限界点なんかありません。
少し難しい話になってきましたが、この話を簡単にするには、子供が遊んでいる様子をイメージしてもらえればOKです。
子供は毎日楽しそうに遊んでいますよね?
なんであんなに楽しそうに遊んでいるかというと、自分の衝動に素直に従っているからなんです。
単にやりたいことをやって、やりたくないことをやらなければ、それでいいんですよ。
もちろん、そんなワガママな発想で生きようとすれば、お金の問題が発生しますが、その問題はUBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)で解決できるというお話を後ほどしますので、少しお待ち下さい。
夢中になれる物事を見つける方法は?
衝動に従えば、いろんな問題が解決されたり、楽しく生きられることはわかった。だけども、そもそも何に夢中になれるのかがわからないんだよね…
という悩みを持っている人も多いと思います。
結論から言うと、夢中になれる物事を見つけるには、「とにかく、なんでもやってみる」しかありません。
この主著の説得力を裏付ける研究がありますので、ご紹介します。
スタンフォード大学の教育学・心理学の教授であるジョン・クランボルツは、アメリカのビジネスマン数百人を対象に調査を行い、結果的に成功した人たちのキャリア形成のキッカケは、80%が「偶然」であるということを明らかにしました。
彼らの80%がキャリアプランをもっていなかった、というわけではありません。ただ、当初のキャリアプラン通りにはいかないさまざまな偶然が重なり、結果的には世間から「成功者」とみなされる位置にたどり着いたということです。
成功者と呼ばれる人のなんと8割が、偶然が重なった結果成功しているんですよ。
要するに何が言いたいかというと、「何が上手くいくかなんて事前にわからないんだから、なんでもチャレンジすることが大事だよ」ということです。
今あなたが夢中になっている趣味だって、やってみた結果、たまたま好きになっただけですよね?
「上手くいかないな」「面白くないな」と思ったら、その活動をやめて、また他のことにチャレンジすればいいんですよ。
夢中になれることを見つけるためにも、ダメ元でチャレンジする意識は、ぜひ持ってほしいなと思います。
- これからは成長じゃなくて、「衝動」を軸に行動すべき
- 「衝動」を軸に行動すれば、ビジネス的に取り組まない問題にも、取り組めるようになる
- 「衝動」を軸に行動すれば、楽しい人生を送れる
- 自分の「衝動」を突き動かす物事を見つけるには、とにかくチャレンジすることが大事
UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)を導入せよ
「衝動」を軸に行動するメリットをサクッと説明しましたが、おそらく今、あなたの頭の中には、1つの問題が浮かんでいると思います。
それは、「お金」ですよね。
やりたいことをやれと言われても、お金の問題があるから、好き勝手できないというのが本音かと思います。
もちろん山口さんは、そのお金の問題を解決するための方法についても解説しています。
その解決策とは、UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)です。
UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)とは?
UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)とは、「文化的で健康な生活を維持するのに必要な金額を、無条件で全国民に配る制度」のことです。
もしこの制度が実現すれば、嫌々仕事をする必要が無くなり、衝動に従って行動することができるようになるということですね。
財源の問題はどうなるの?→増税で解決
UBIの内容を見て真っ先に思うことは、
全国民に配る金なんて、あるの?
という疑問だと思います。
結論から言うと、ありません。
なのでUBIを実現するには、増税は避けて通れないということは、覚えておいて下さい。
日本の税率は、それほど高くない
「税金を上げるなんてふざけんな!」と思われたかもしれませんが、実は日本の税率って、そんなに高くないんですよ。
OECDという世界中の経済や福祉の発展を目指すために設立された組織があるんですけど、そのOECD加盟国36カ国の中で、日本の税金負担率は、下から8番目と低い水準となっています。
このデータを見れば、決して日本が高い税率でないことがわかると思います。
さらに重要なのが、税金の負担が高い国は、幸福度が高い傾向にあるということです。
- ルクセンブルク→10位
- フランス→23位
- デンマーク→2位
- 日本→62位
このランキングからは、税金の高さは必ずしも不幸には直結しない、むしろ幸福度を上げる要因になっていることが読み取れます。
結局のところ、人が根本的に求めていることって「幸せ」ですよね。
その幸せを税金の高負担によって達成できるなら、税率を上げない理由は無いと思いました。
- UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)とは、「文化的で健康な生活を維持するのに必要な金額を、無条件で全国民に配る制度」のこと
- UBIを実現するには、増税は避けて通れない
- 日本の税率は高くない
- 税金の高さは必ずしも不幸には直結しない、むしろ幸福度を上げる要因になっている
ビジネスの未来―エコノミーにヒューマニティを取り戻す:まとめ
今回は、「ビジネスの未来―エコノミーにヒューマニティを取り戻す」を3つのポイントで解説しました。
- 成長はもういらない?→「成長には限界があるから、経済成長を追い求めるのはもうやめよう」というお話をしました
- これからは「衝動」の時代→「衝動に従って行動すれば、解決されない問題を解決できるし、国民が活き活きと活動できる」というお話をしました
- UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)を導入せよ→「お金の問題は、UBIによって解決できる」というお話をしました
なお、今回ご紹介したことは本書のごく1部分です。
山口さんの主張の大枠を簡潔に伝えるために、省略している部分がかなりあります。
今回の記事を読んで、「なかなか面白いことを考えているなぁ」と感じた方は、「ビジネスの未来―エコノミーにヒューマニティを取り戻す」を絶対に楽しめますので、ぜひ手にとって読んでほしいですね。
目次
- はじめに
- 第一章 私たちはどこにいるのか
- 第二章 私たちはどこに向かうのか
- 第三章 私たちは何をするのか?
- 補論
- 終わりに
では、以上です。
良き読書ライフを!